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年齢を重ねても笑顔で健やかな⽣活を
送るために
年を重ねるごとに、全身には様々な変化が訪れます。これはお口の中も決して例外ではなく、老化によって口内環境が変化することで、歯周病による歯の喪失や口臭など、お口全体のトラブルが起こりやすくなってしまうのです。
このようなお口のトラブルは、私たちの生活には欠かせない食事や会話などにも影響するだけでなく、時には全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があることをご存知でしょうか?
近年は健康的な生活を送る重要な因子として、お口の中の健康も重視されています。
高瀬歯科医院では、口元から全身の健康をサポートし、いつまでも楽しく豊かな生活を送っていただけるよう、高齢の患者様の歯科治療にも力を入れております。
⾼齢者における⻭科治療の重要性
⻭を失った後にすべきこと
年齢が上がるにつれ、平均的な⻭の本数は減少していきます。理由としては単純に、⻭が折れてしまったり、⻭周病などの⻭科疾患により保存が困難となったりするためです。
ただ、⻭を失ったとしても⻭科医院で適切な処置を受ければ、お⼝の健康が⼤きく損なわれることはありません。例えば、失った⻭の代わりとして、⼊れ⻭やブリッジ、インプラントなどの治療をすることで、⾒た⽬だけでなくかみ合わせの機能も維持できるのです。
しかし、⻭が抜けた状態を放置してしまうと、周囲の⻭に負担が⽣じて⻭の寿命が縮まったり、⻭並び・かみ合わせが悪化したりすることにも繋がりかねません。
以下に当てはまる⽅は、特に注意が必要です。
- しばらく⻭科医院での検診を受けていない
- 過去に⻭周病の既往歴がある
- ⻭ぐきからの出⾎が続いている、⻭ぐきがブヨブヨしている
- ⻭が⻑くなった気がする
- ⼊れ⻭が合わず装着していない
- ⻭が抜けた状態が続いている
では⾼齢者によくみられるお⼝のトラブルや⻭の病気には、⼀体どのようなものがあるのでしょうか?次に詳しく解説していきたいと思います。
⾼齢者によくみられる⻭の病気やトラブル
⾼齢者に多いのは⻭がグラグラする、⻭ぐきから出⾎する、などの症状がある⻭周病です。⻭周病は年齢が⾼くなるほど罹患しやすいのが特徴ですが、ご⾃宅での徹底したセルフケアに加え、⻭科医院での定期的な検診と、プロが⾏うクリーニングを受けることでリスクを抑えることができます。
また、通常の⾍⻭だけでなく、加齢によって⻭ぐきが下がる⾼齢者の⽅は「根⾯う蝕」と呼ばれる、⻭の根っこの部分に⽣じる⾍⻭になりやすいとされています。この⾍⻭は、適切なケアによっては進⾏を滞らせ、⻭を削らずに⻭科医師による定期観察で済むこともありますので、早期の発⾒と対処が重要となります。
しかし、⾼齢者の場合、上記の⾍⻭や⻭周病だけではなく以下についても注意が必要です。
- ⻭ぐきが下がることにより⻭がしみる知覚過敏
- 唾液の分泌低下によるドライマウスや味覚の低下
- ⻭を失ったことでおこるかみ合わせ、⻭並びの悪化
- ⻭の劣化に伴って起こる⻭の⽋けや割れ(破折)
- ⽼化、⻭の喪失による⻭を⽀える⾻(⻭槽⾻)の減少
- 合わない⼊れ⻭による粘膜の痛みや炎症
- 機能低下によって⽔や⾷べ物を飲み込みにくくなる嚥下障害(えんげしょうがい)
上記のように、加齢による機能の低下や組織の変化によって、様々なトラブルに繋がりやすいのが⾼齢者の特徴です。
また、発⽣率としては稀ではありますが、⾆や⼝内の粘膜はがん(悪性腫瘍)が発⽣する場所でもあります。中には前がん病変と呼ばれる⼝内粘膜の変化により、がんの早期発⾒と早期治療に繋がることもありますので、⾼齢の⽅には特に⻭科医師による定期的な検診が重要と⾔えるでしょう。
⻭がないことのデメリットとは?
⻭がないことで感じる不便さは⽇常⽣活の中でも多く存在しますが、主に以下の点において⼤きなデメリットとなるでしょう。
⽼けた印象になりやすい
特に、笑った時他⼈から⾒える前⻭がない場合には、⾒た⽬の印象にも⼤きな影響を及ぼします。これは、いわゆる「⻭抜け」と呼ばれる状態となってしまい、清潔感や若々しさが低下してしまうことが⼤きな要因です。
しかし、前⻭だけでなく奥⻭がない状態でも、⾒た⽬の印象は変化します。奥⻭がない状態が続いてしまうと、うまく咀嚼できずにお⼝周囲の筋⼒が低下したり、抜けた⻭の周囲の⾻が痩せていったりするため、実年齢よりも⽼けてみられてしまうことがあるのです。
こうした⾒た⽬の変化により、⼈との会話や⾷事中に気になって⼝元を隠してしまう、旅⾏先の写真撮影でうまく笑えない、などのデメリットも考えられるでしょう。
発音が不明瞭になり会話がストレスに
⻭の喪失により起こりやすいトラブルの⼀つに、「滑⾆が悪くなる」ことがあります。これは、⻭がなくなることで発⾳する際に空気が漏れてしまったり、⾆の動きが悪くなったりすることが原因です。
発⾳が不明瞭になると、⾃分の発する⾔葉が相⼿に伝わりにくくなり、それに伴い会話がスムーズに進みにくくなります。会話がうまく進まないことで、会話すること⾃体に疲れる、イライラしてしまう、などの理由から対⼈関係の悪化に繋がってしまうことも少なくありません。
⾷事を⼗分に楽しめない
⾷事はただ栄養を摂取するだけではなく、ご家族やご友⼈とのコミュニケーションの場でもあります。しかし、⻭がないことで噛むことが難しくなり、⾷べ物を⼝からこぼしてしまったり、咀嚼⾳が⼤きくなってしまったりと、誰かと⾷事を純粋に楽しむことができなくなってしまったという⽅もいらっしゃいます。
気になる⼝臭のリスクも
⻭がなくなり、今まで保たれていた上下のかみ合わせのバランスが崩れてしまうと、他⼈にも影響を与えかねない⼝内トラブルである「⼝臭」が⽣じやすくなります。⼝臭には様々な要因がありますが、⾼齢の⽅は以下の要因からお⼝の臭いが発⽣することが多いでしょう。
- ⻭磨きが不⼗分である
- ⻭周病に罹患している
- 唾液が不⾜している
特に、⻭がなくなってしまうと噛む回数が少なくなりやすいことから、唾液の分泌量が不⾜しやすくなります。こうして⼝内が乾燥し、細菌が繁殖しやすい状態となることで、⼝臭へと繋がってしまうのです。
当院を受診してくださった⽅の中には、お孫さんに⼝臭を指摘されたという⽅もいらっしゃいます。ご⾃⾝の健康だけでなく、⼤事なご家族のためにもお⼝のトラブルを改善し、⻭の健康を維持することをおすすめいたします。
上記はあくまでお⼝の中のトラブルですが、⻭のトラブルがきっかけで全⾝の健康状態に影響を及ぼすケースも珍しくはありません。
⾼齢者の⻭のトラブルにより起こり得る全⾝疾患
⼝内から全⾝のトラブルへ
⻭周病は最悪⻭が抜けるだけ、と多くの⽅が認識しているかと思いますが、実際は全⾝の健康に影響をきたす疾患を引き起こすことがあるのをご存知でしょうか?特に⾼齢者の場合、免疫⼒の低下などから、時には⼝内のトラブルによって命に関わる疾患を招くことも少なくありません。
⻭周病などの⻭のトラブルは、以下の疾患の引き⾦となることがあるのです。
脳梗塞(脳卒中)
脳梗塞とは、脳の⾎管が詰まることで起こる病気です。死亡率が⾼く、⼀命を取り留めても脳性⿇痺や⾔語障害などの後遺症が残る可能性があります。
なぜ⼝内のトラブルがこのような重篤な疾患の引き⾦になるのかというと、⻭周病によって分泌される毒素や炎症物質が⻭ぐきの⾎管に侵⼊し、そこから⾎流に乗って全⾝の⾎管に影響を与えるためだとされています。
これにより、全⾝の⾎管が⻭周病菌の分泌物が原因となって動脈硬化が進⾏し、脳梗塞の発症に繋がってしまうのです。
中でも、コレステロールや⾎圧、中性脂肪が⾼かったり、脂っこい⾷事が好きだったりする⽅は元々動脈硬化のリスクが⾼いため、⻭周病を予防して⻭の健康を維持することも⾮常に重要となります。
狭⼼症・⼼筋梗塞
脳梗塞と同じように、⻭周病の出す毒素や炎症物質が⾎流に乗り動脈硬化が起きると、狭⼼症や⼼筋梗塞などの⼼臓疾患を発症することがあります。
これらの⼼臓疾患も、脳梗塞のように最悪の場合死に⾄ることもある危険な疾患です。
糖尿病
⻭周病は糖尿病と深いつながりがあることをご存知でしょうか?⻭周病菌の出す毒素や炎症物質は、⾎流に乗って全⾝へと流れることで⾎糖値を下げる役割を担うインスリンの働きを悪くするとされています。
また、糖尿病があることで⻭周病になるリスクが⾼まる、⻭周病の治療で糖尿病の症状にも改善がみられるなど、⻭周病と糖尿病の改善は双⽅の疾患を良好にするために⽋かせない関係と⾔えます。
アルツハイマー型認知症
普段私たちは何気なく⾷べ物を噛んでいますが、この噛むという⾏為は脳を刺激して活性化を促すことにも繋がっています。しかし、⻭を失うことで噛む回数が減少すると、脳への刺激も低下して認知症に繋がることがあるのです。
また、近年では⻭周病とアルツハイマー型の認知症に関係があることがわかってきました。アルツハイマー型認知症とは、脳内に異常なタンパク質が蓄積し、これにより神経細胞が破壊され脳が萎縮することで発症する病です。
このアルツハイマー型の認知症においても、⻭ぐきから⾎流に乗った⻭周病菌によって産⽣された炎症成分が異常なタンパク質を作り出し、やがて脳内に取り込まれることで発症リスクが⾼まるのではないかとされています。これが判明したのはマウスの実験ではありましたが、⼈間の場合にも同様のことが起きている可能性が⾼いと⾔えるでしょう。
いずれにしろ、⻭の喪失や⻭周病の罹患により認知症のリスクは上昇しやすい傾向にあるため、噛めない、⻭がグラグラするなどの症状はいち早く治療する必要があります。
⼝腔機能の低下
⽼化によって機能が低下するのは、お⼝の中も同様です。⼝腔機能が低下することにより、以下の症状が現れることがあります。
- ⾷事の時間⻑くなったと感じる
- 噛みにくさや飲み込みにくさを感じる
- 飲み込んだ後も⾷べ物が⼝の中に残りやすくなった
- 飲⾷の際によくむせるようになった
- ⾆や⻭の周りの汚れが⽬⽴つようになった
- ⼊れ⻭に⾷べかすが多く残っている
- お⼝の中が乾燥しやすい
- 発⾳がしにくくなった
- ⼝臭を指摘された…等
当院では上記のような症状がある⽅を含め、⼝腔機能の低下がみられる⾼齢の患者様にむけ、患者様⼀⼈⼀⼈の状態に合わせた機能改善のための治療も⾏っております。
できる限り⻑い間⾷事や会話、趣味を楽しんでいただくためにも、以前にはなかった症状や変化が現れた際には、なるべく早くご相談ください。
摂⾷・嚥下障害による誤嚥性肺炎
あまり聞き慣れない⾔葉かもしれませんが、普段私たちが⾷事で⾏っている
「咀嚼して⾷べ物を噛む→飲み込む」
という⼀連の動作は摂⾷・嚥下と呼ばれています。
しかし、年齢とともにこの咀嚼や嚥下機能が低下し、「噛めない」「飲み込みにくい」「むせやすくなる」など摂⾷・嚥下障害が⽣じる⽅も多くみられます。この摂⾷・嚥下障害は、ただ⾷事がしにくくなるだけでなく、命にも関わる誤嚥性肺炎に繋がってしまうことがあるのです。
⼝腔内が不衛⽣で⻭周病などに罹患しているお⼝の中には、細菌が多く繁殖しています。免疫⼒が低下している⾼齢の⽅は、これらの細菌が誤嚥によって肺に運ばれることで肺炎が発⽣しやすくなるため、特にお⼝の中の清掃をしっかりと⾏い、清潔な状態を保つことが重要とされています。
ドライマウス(⼝腔乾燥症)
⾼齢の⽅は⽼化による唾液分泌の低下に加え、⻭の喪失などによって噛む回数が減ることで唾液が少なくなり、お⼝の中が乾燥しやすくなります。
唾液の減少は喋りにくさや不快感だけでなく、本来唾液の重要な役割でもある⾃浄作⽤や殺菌作⽤が機能しなくなるため、⾍⻭や⻭周病、⼝臭などのトラブルにも繋がりやすくなります。⼝腔乾燥症は加齢だけでなく、ストレスや脱⽔、薬剤の副作⽤や糖尿病などの疾患によっても⽣じるため、原因に合わせた対処⽅法が必要です。
⾼齢者は⻭が無いというのは実は誤解というデータも
祖⽗⺟や両親が⼊れ⻭を使⽤していたことから、⾼齢になると⻭がなくなることが当たり前である、そう思っている⽅は多いのではないでしょうか。しかし、⾼齢になった=⻭が抜けるというのは全くの誤解です。
本来、⻭の寿命とは年とともに耐久⼒がなくなり、割れたり折れたりして抜かざるを得ないことをいいます。実際、予防⻭科先進国と呼ばれているスウェーデンでは、70歳代後半の⻭が1本もない⼈の割合が⽇本で27.4%だったのに対し、スウェーデンでは80歳で3%となっており、さらに⻭の喪失原因は破折(割れたり折れたりすること)が全体の約6割と、⾍⻭や⻭周病を⼤きく上回っています。
つまり、⾍⻭や⻭周病による⻭の喪失は本来の寿命というわけではなく、病変による病死とも⾔えるのです。しかし、⽇本国内では最も多い⻭の喪失原因として⻭周病が37%、次いで⾍⻭が29%という調査結果が出ています。(8020推進財団 第2回 永久⻭の抜⻭原因調査より)
このことから、⻭が抜けるのは加齢も⼀部要因があるものの、⾼齢になったらほとんどの⻭が抜けてしまう、というのは間違いであると⾔えます。
⻭の多い⾼齢者
厚⽣労働省が令和4年11〜12⽉に実施した調査で、20本以上の⻭を有する⽅の割合(8020達成者)は、
65~69歳で81.4%、
70~74歳で72.1%、
75~79歳で55.8%、
80~84歳の時点でも45.6%で、
85歳以上の方が38.1%
と3⼈に1⼈以上が健康な⻭を保つことができています。
また、1⼈あたりの現在の⻭の平均本数は、
65〜69歳で23.8本
70〜74歳で21.0本
75〜79歳で18.1本
80〜84歳で15.6本
85歳以上でも14.0本
という結果となっています。
さらに、インプラントや義⻭、ブリッジなどの装着をしている⼈の割合は、
65〜69歳で53.6%、
70〜74歳で74.8%、
75〜79歳で77.5%、
80〜84歳で90.1%、
85歳以上は86.7%
いることが判明しました。
参考:厚⽣労働省 令和4年⻭科疾患実態調査の結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf
⻭があることはQOL(⽣活の質)の向上にも繋がります
当院を受診している80歳の患者様のケース
当院では、⻭の健康を保ち⽇々楽しく健やかに過ごしている、とある⾼齢の⼥性患者様がいらっしゃいます。
定期的に⻭科検診を受診されており、来院の際はお孫さんの介助により⾞で来院しているものの、とても若々しく80歳という実年齢よりも若い印象を受けます。
診療中の際に交わす会話の中で、最近の楽しみは「お⾁を⾷べること」で、お孫さんによると厚切りのステーキが⼤好物だとわかりました。
噛む⼒が弱くなった最近では、お⾁を細かく切っているとのことですが、現在も楽しく⼤好きな厚切りの⾁を召し上がっているそうです。こちらの元気な患者様ですが、現在も80歳でありながらご⾃⾝の⻭が20本しっかりと残っています。
この患者様のように、適切なケアと定期的な検診によっては年齢に関わらず多くの⻭を保ち、ご⾃⾝の好きなものを⾷べながら健康的に楽しく過ごすことが可能なのです。
⻭が健康な⼈と不健康な⼈の差とは?
では、先述した患者様のように歯が健康な人と、そうでない人の差は一体どこで生じてしまうのでしょうか?
これには、下記の3つのポイントが関係していると考えられます。
- 01.健康的な⽣活習慣を維持している
- ⻭が健康な⽅はお⼝の中はもちろん、全⾝の健康にも気を遣っている⽅が多い傾向にあります。具体的には、⻭周病と深い関わりを持つ糖尿病を予防するために⾷事に気を遣っていたり、タバコを控えていたり。特に喫煙は、タバコの有害物質によって⻭ぐきの⾎管が縮⼩し酸素供給が低下、⻭周組織の免疫⼒低下などを引き起こすため、⻭周病を誘発する⼤きなリスクとなります。
- ⻭が健康な⼈は、全⾝の健康を意識した⾷⽣活や⽣活習慣を送ることで、結果的に⻭の健康にも繋がっていると⾔えるでしょう。
- 02.毎⽇⻭を適切に磨けている
- ⻭磨きでは、⻭周病や⾍⻭の主な原因となる⻭垢(プラーク)を除去する必要があります。⻭垢は細菌の集合体であり、時間が経過すると⽯灰化して⻭ブラシでは取れない⻭⽯となります。⻭⽯はざらざらとしているため⻭垢が付着しやすく、そこから⾍⻭や⻭周病へと発症してしまうことも少なくありません。そのため、⽇々の⻭磨きでは、⻭⽯になる前にプラークをしっかりと除去することが重要です。この毎⽇のセルフケアがしっかりとできている⽅は、⻭が健康であることが多いでしょう。
- 就寝中は唾液分泌量が減少し、細菌が繁殖しやすくなるため、当院では最低でも1⽇1回、可能であれば寝る前に⻭ブラシや⻭間ブラシなどを使⽤し徹底したセルフケアの実施を推奨しております。
- 03.かかりつけ医での定期的な⻭科検診を受けている
- 定期的に⻭科医院で検診、クリーニングを受けている⽅は、⻭が健康であることが多い傾向にあります。以前は⻭科医院=病気になってから⾏く場所という認識が広く普及していましたが、近年では予防⻭科の概念も徐々に広まり、⻭科医院=病気にならないために⾏く場所と捉える⽅も多くなってきました。
- このように、予防的な処置を受ける⽅の場合、⾍⻭や⻭周病の早期発⾒や早期治療につながるだけでなく、専⾨家による⻭磨き指導を受け適切なセルフケアを実施できることから、⾼齢の⽅でもご⾃⾝の⻭を保ち、健康的に過ごしている⽅が多い印象です。
⾼齢者の⻭科治療で⼤切な事
合わせた治療を
⽼化によって、お⼝の中では徐々に多くの変化が起こります。
- 噛む⼒が弱くなる、回数が減る
- 唾液が出にくくなる
- ⾷べ物や飲み物が飲み込みにくくなる
- 発⾳がしにくくなる
- ⻭の強度が弱くなる
- ⻭を⽀える⾻(⻭槽⾻)が減少する
- ⻭ぐきが下がる…等
これらの変化は、⻭周病などの⻭科疾患を引き起こすだけでなく、⽇常⽣活に⽋かせない⾷事や会話に悪影響をきたし、⼼⾝の健康を損なう可能性もあります。
そのため、⾼齢の⽅の場合
- しっかりと噛めるようになること
- ⼝腔機能を改善すること
- ⼝内を清潔に保てるようにする
上記が⻭科治療において重要と⾔えます。当院では、特に以下の治療に注⼒しております。
⼊れ⻭を調整してきちんと装着できるようにする
合わない、違和感がある、痛いからと⾔って、⼊れ⻭を使⽤しないのは危険です。⼊れ⻭は単に⾷べ物を噛み砕く、という役割だけでなく、抜けた⻭の代わりとなり、かみ合わせや⻭並びなどのバランスを保つ役割も担っています。
例えば、⼊れ⻭を装着していないと、抜けた⻭の⾻(⻭槽⾻)の周囲に刺激が伝わらなくなり、⾻が徐々に痩せていってしまったり、かみ合っている⻭が天然の⻭である場合、その⻭が上に出てきてしまう挺出(ていしゅつ)という現象が起こり、かみ合わせのバランスが崩れたりすることにも繋がりかねません。また、噛む回数が減少することで脳へ伝わる刺激が減少し、認知機能に影響を及ぼす可能性もあります。
当院では、新しい⼊れ⻭作りから既存の⼊れ⻭の調整まで、幅広く対応しております。⼊れ⻭でもしっかりと噛めるよう、個々の状態に合わせた治療プランを提供しておりますので、⼊れ⻭が合わなくて痛い、噛みにくい、などのお悩みがある⽅はそのままにせず、お気軽に当院までご相談ください。
⻭磨きや⻭科医院でのクリーニングで⼝内の清潔を保つ
お⼝の中を清潔に保つことは、⻭だけではなく全⾝の健康にも繋がります。
⾼齢の⽅は免疫⼒が低下していることも多いため、1⽇1回は必ず念⼊りにセルフケアを⾏いましょう。
⼊れ⻭を使⽤している⽅は、残っている⻭と合わせて⼊れ⻭のケアも必要になります。⼊れ⻭は⾷後に外し、⼊
れ⻭⽤のブラシなどで⾷べかすを落とすように洗浄してください。
また、⻭磨きをする際には⻭ブラシだけでなく、⻭間ブラシなどの補助的な清掃器具を使⽤することをおすすめいたします。使い⽅がわからない、⻭がちゃんと磨けているか不安、という⽅は、⼀度⻭科医院にて個別の⻭磨き指導を受けてみましょう。
上記のセルフケアに加え、⻭科医院での定期的な検診とクリーニングを合わせたプロフェッショナルケアを受けることで、⻭の健康と⼝腔機能は保ちやすくなります。
当院でも⾼齢の患者様へ向け、⻭周病など⻭科疾患の早期発⾒と早期治療、お⼝の清潔を維持するため、3か⽉〜半年に⼀度の定期検診を推奨しております。
お⼝の中から全⾝の健康を保ち、いつまでも⾷事や会話を楽しむためにも、セルフケアをしっかりと⾏いながら、定期的にかかりつけ医での⻭科検診を受けましょう。